フォリウム:前篇

フォリウム:前編
ニュージーランド南島北端に位置するマールボロ。ここは、世界屈指のソーヴィニョン・ブランの生産地です。ほとばしるようなパッションフルーツや爽やかなハーブの香りが、実に特徴的な白ワインです。フルーティで飲みやすく、多く人にとってワインを飲みはじめるきっかけとなるようなワインではないでしょうか。現在、ニュージーランドのワインの約80%がソーヴィニョン・ブランで、そのうち90%がマールボロ産。まさにニュージーランドを代表するワイン、と言っても良いでしょう。
【フォリウム 岡田岳樹さん】
そんなマールボロで活躍される日本人醸造家、岡田岳樹さんにお話をお伺いすることができました。岡田さんは、カリフォルニア大学デイビス校で栽培・醸造学を学んだ後、修行の場を求めてニュージーランドへ。フランスに本拠地のあるワイナリー「クロ・アンリ」に入社後、栽培責任者の職を経た後、2010年6月に独立。ワインには自分の名前をつけることは敢えてせずに、ラテン語で「葉」という意味の「フォリウム」と名づけました。その一言に、色んな思いがこめられたスマートなブランド名と、高級レストランのテーブルでも映えそうな洗練されたデザインのラベルは、実に良くマッチしています。
【マールボロでマールボロらしいものを作っても、大手には絶対敵わないから】
今回頂いた「フォリウム・リザーヴ・ソーヴィニョン・ブラン」は、実は「とにかくマールボロらしくないソーヴィニョン・ブラン」と聞き、興味を惹かれて手にしたワインでした。マールボロのソーヴィニョンの、一番の特徴でもある強いパッションフルーツの香りは、フォリウムのそれにはあまり感じられません。そのかわりに柚子、かぼす、あるいはキンモクセイの花のような、はんなりとした、同時にぎゅっと凝縮感のある香りがします。口当たりはとても優しく、しっかりと奥行きと芯を感じられ、その味わいがいつまでも続きます。これは同じソーヴィニョン・ブランでも、フランスのロワール地方サンセールで作られているものに近いスタイルです。

フォリウムは、岡田さんと後一人、パートタイムのスタッフで運営している小さなワイナリーです。小さなワイナリーだからこそ大手と違うことをしなければ、と、ニュージーランドのブドウを使って、もともと好きだった「サンセールのようなワイン」ができるのではないか、と想定してのワイン作りでした。
ニュージーランドのワイナリーの多くは、ソーヴィニョン・ブランの派手なパッションフルーツの香りが、できるだけ高くなるようにワインを作るそうです。が、フォリウムではむしろ、できるだけ抑えるようにしているとのこと。これは、食事と共に楽しめる「食中酒」としてのワインを作るため。確かにフォリウムのソーヴィニョン・ブランは、主役になるというよりも、むしろ食事に優しく寄り添ってくれるようなワインでした。凝縮感のあるその味わいは、飲んだ翌日にも「ああ、昨日飲んだワイン、美味しかったな」と、穏やかな余韻を残してくれます。
【ヨーロッパの優良な産地でブドウの品質を上げるために当たり前のようにやっていることを、場所を変えてやっている】
フォリウムと他の生産者との決定的な違いは畑にあります。まず、樹を大きく仕立てることの多いマールボロで、ぐっと小さめに仕立て、1本あたりの収量をの平均の半分以下に抑えていること。そして畑の樹の密度も、マールボロの平均は1ヘクタールあたり1500-2000本に対し、フォリウムの畑は4000本と、2倍の高密度で植わっています。一般的に、ブドウの収量は抑えれば抑えるほど、樹の植密度は高ければ高いほど、ブドウの味わいには凝縮感が出て、質の良いものが収穫できるとされています。そして収穫は全て手作業。ブドウの品質を上げるために出来ることは、マールボロの生産者たちの間では不要と思われていることでも、どんどんやってしまう、という岡田さん。
大手メーカーが集中するマールボロで、小さなワイナリーが作る、異色なソーヴィニョン・ブラン。しばらくは、忘れられない味になってしまいました。
次回も引き続き、フォリウムについてご紹介していきます。
https://www.facebook.com/foliumvineyard/
http://www.nakato.jp/wine/data/lists/FOLIUM.pdf

